日経新聞:企益収益堅調、人件費はコロナ前届かず 法人企業統計

企業収益は改善を続けている。財務省が1日発表した法人企業統計調査では7~9月期の経常利益は前年同期比18.3%増と7四半期連続の増益となった。資源高や急激な為替変動の中でも業績は堅調に推移している。新型コロナウイルス流行前より経常利益は2割以上増えたのに、人件費は1.7%減と低迷する。働く人への分配のあり方が問われている。

中期的にみても日本企業は人件費への配分を手控えてきた。年次調査によると21年度の経常利益は10年間で1.9倍、税引き前当期純利益は2.3倍に増えたのに、人件費は3.3%増にとどまった。この間、配当金は2.5倍に増え、株主への還元は強化されてきた。

経営体力が相対的に弱い企業の賃上げを可能にするには、取引環境の改善や価格転嫁の実現が不可欠となる。みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井才介氏は「先行きで海外経済の減速が見込まれる状況を踏まえれば、十分な賃上げを実施できる企業は限定的だろう」と指摘する。

内部留保の指標である利益剰余金は21年度の年次調査で500兆円を突破した。四半期ベースでみても7~9月期はコロナ前である19年同期に比べ12.5%増えた。資本金10億円以上の大企業は15.0%増える一方、同1000万~1億円の中小企業は7.1%増にとどまる。

ソニーフィナンシャルグループの宮嶋貴之氏は業績回復について「業種や企業規模で格差が大きい」と話す。