野村総合研究所が、大手企業のCIO又はそれに準じる役職者を対象に実施した「IT活用の実態調査」結果(有効回答数466社)によると、2022年度の自社のIT投資が前年度に比べて「増加した」との回答企業は52.9%で、2021年度の調査よりも7.7ポイント増加した。2023年度のIT投資は、2022年度よりも「増加する」との予測企業が49.0%とほぼ半数にのぼり、2021年度の調査(50.5%が増加を予測)に近い結果となった。

また、デジタル化の推進による効果(複数回答)は、「業務プロセスの改善、生産性向上」と「業務に関わる人数や労働時間の削減」を挙げた企業がそれぞれ81.5%、77.4%。一方で、「新規事業や新サービスの創出」 や 「SDGs、地域活性化などの社会課題解決への貢献」を挙げた企業は、それぞれ28.8%、17.1%にとどまり、事業や社会を変革していく観点での価値創出は、各企業の今後の取組みに委ねられていると言える。

デジタル化の推進から効果を得る上で各社が直面している課題(複数回答)は、「デジタル化を担う人材の不足」を挙げた企業が最も多く、80.5%に達しった。これに対して、課題を解消するために行っている取組み(複数回答)として、「人材のスキル向上や専門人材の採用」を挙げた企業は48.2%にとどまっている。人材の不足は課題として大きく認識されているものの、解消のための具体的な取組みはまだ途上にあると言える。

本調査ではデジタル化の取組みを、「顧客に対する活動のデジタル化」、「業務プロセスのデジタル化」、「デジタル化による事業やビジネスモデルの変革」の3つの領域に分け、取組みの年数を尋ねた結果、「業務プロセスのデジタル化」では5年以上の取組みを行っている企業の割合が39.3%であるのに対し、「顧客に対する活動のデジタル化」と「デジタル化による事業やビジネスモデルの変革」ではそれぞれ16.3%、10.7%にとどまった。

さらに3領域について「取り組んでいない」との回答企業以外を対象に、投資から成果を得ているかを尋ねたところ、「財務上の成果(コストの削減、収益の増加など)が得られている」 もしくは 「他の定量的な成果(顧客獲得数、顧客満足度など)は得られている」と回答した企業の割合は、「顧客に対する活動のデジタル化」の領域では、取組み期間が3年以上5年未満の回答企業で56.7%、5年以上の回答企業で69.2%だった。

同様に、財務上の成果、他の定量的な成果が得られていると回答した企業の割合は、どの領域においても、取組みの期間が長いほど 「財務上の成果(コストの削減、収益の増加など)が得られている」 と回答した企業の割合が高いという傾向がみられる。デジタル化への投資を意味のある成果につなげるためには、中長期の視点を持って取組みを進める必要がある。特に、事業やビジネスモデルの変革については、腰を据えた取組みが求められる。

同調査結果は↓
野村総合研究所:国内企業を対象に「IT活用の実態調査」を実施

(タックスコム提供)