東京商工リサーチによると、ネット銀行をメインバンクにする企業が増えているという。ネット銀行がメインバンクの企業は2013年では665社に過ぎなかったが、2022年には3446社と10年間で5倍に増えた。これまでは創業時に地元の金融機関に口座を開設するのが定石だった。だが、経済合理性に徹し、企業価値を高めると資金調達の道は広がる。金融機関に期待する時代ではないと考える経営者が増えてきても不思議ではない。
創業時に地元の金融機関に口座を開設という、これまでの常識は通用しなくなったようだ。人口減少やマイナス金利など金融機関を取り巻く環境は厳しいが、新興のネット銀行の台頭でサービス競争は激しさを増している。上記の数字は、東京商工リサーチが保有する155万3601社の企業情報から、ネット銀行がメインバンクの企業を集計したもの。メインが複数ある場合、融資額が多い銀行をメインバンクとした。
集計の対象は、auじぶん銀行、GMOあおぞらネット銀行、PayPay銀行、住信SBIネット銀行、ソニー銀行、大和ネクスト銀行、みんなの銀行、楽天銀行、UI銀行の9行。イオン銀行とセブン銀行、ローソン銀行は除いている。2022年の企業のメインバンク上位は、「三菱UFJ銀行」(12万5837社)、「三井住友銀行」(9万8778社)、「みずほ銀行」(8万620社)の3メガバンクが他を圧倒している。
一方で、ネット銀行は、メガバンクや地銀と比べると社数はまだ見劣りする。だが、メインバンクの企業数の増加率は他業態を圧倒し、ネット銀行の勢いを見せつける。2013年と2022年の10年間の増加率は、メガバンク3行が5.7%増に対し、ネット銀行9行は418.1%増と5倍に伸びている。ネット銀行のうち、2022年のメインバンク企業数のトップは、「楽天銀行」で1394社だった。
次いで、「PayPay銀行」が1268社と続き、第二地銀や信金、信組に匹敵する水準に届きつつある。ネット銀行をメインバンクとして取引する経営者は、「入出金がリアルタイムにできるのがネット銀行の強み。制度融資が使える金融機関と使い分けている」と語る。リアル店舗にない多様な利用者ニーズに応えるネット銀行が、インターネット融合を強みにどこまで勢いを加速するか注目されている。
(タックスコム提供)