日経新聞:超富裕層に増税検討 財務省「1億円の壁」是正目指す

所得の多い富裕層ほど税負担率が低くなる逆転現象を是正する動きが出ている。財務省は所得が年間数億円を超える人を対象に税負担を引き上げる検討に入った。所得の種類にかかわらず公平な仕組みとして、所得総額に対して一定の税を求める案がある。政府が進める創業支援に逆行しない設計が必要になる。

見直しには金融所得課税との関係を整理する必要がある。株売却益などの課税強化は幅広い層に影響が及ぶ。岸田文雄首相は21年の就任直後に金融所得課税の強化を掲げたものの、市場の警戒感が強まり取り下げた。

スタートアップ支援は首相が掲げる「新しい資本主義」の重点分野だ。非上場株への実質的な課税強化につながれば、スタートアップの創業意欲をそぐ恐れもある。政府は新興企業の成長を促す税優遇策も検討する。

23年度税制改正では中間層の所得倍増に向け、積立型の少額投資非課税制度(NISA)の投資枠や期間を拡充する方向だ。所得格差に目配りし、幅広い所得層の資産形成を促す両輪での対策が大きな焦点となる。

社会保障費の増加や新型コロナウイルス禍、物価高への対応で政府の債務残高は膨らみ続けている。財政健全化へ消費税や所得税の税率を引き上げる議論もいずれは避けて通れない。そのためにも税の公平性、公正性への信頼を高める取り組みが欠かせない。