年末の税制改正作業に向け、個人の教育訓練費用に対する所得税の控除制度の拡充が経済財政諮問会議の民間議員から要望されている。去る10月5日に開かれた同会議では、岸田総理が3日の所信表明演説で掲げた“人への投資”を受け、民間議員4人の連名で、労働者の自発的な投資を引き出すために、個人の教育訓練投資を人的資産とみなし、その費用を複数年にわたって所得税から控除する税制上の措置を講ずべきとの要望があった。

現行でも研修費等に係る所得税の控除制度として、個人事業主又は給与所得者を対象に、業務に必要な研修等に要する当年度の費用の一部を、当年度に控除できる仕組みがある。給与所得者が対象なのが特定支出控除制度で、通勤費・職務上の旅費・転居費・研修費・資格取得費・帰宅旅費・一定の勤務必要経費、の7支出が対象。ただし、個人事業主の必要経費としての控除とともに、費用の複数年控除はできず、職務に必要なものに限られている。

一方、岸田総理は諮問会議の締めくくりで、個人の多様な選択を支えるしなやかな労働市場を整備していくことが必要との考えの下、「構造的な賃上げに向けては、最低賃金を含む賃上げの継続に加えて、人への投資が不可欠。人への投資策を5年間で1兆円のパッケージに拡充する中で、誰もが教育訓練を受けられるようリスキリング(学び直し)に対する効果的な支援を強化する」と発言している。

この“賃上げと人への投資”から想定されることの一つに、給与額が一定額以上増加した場合に法人税の税額控除が受けられる賃上げ促進税制において、教育訓練費が一定額以上増加した場合には税額控除率の上乗せができる制度の拡充がある。賃上げ促進税制は2022年度税制改正で給与総額の増額分を法人税額から差し引く控除率の引上げなど拡充されたばかりだが、さらなる改正が行われるのか今後の動きが注目される。

経済財政諮問会議の会議資料は↓
内閣府:第12回会議資料:会議結果 令和4年

(タックスコム提供)