新型コロナ感染拡大は、外出や宴席の自粛が広がり飲食業界を直撃した。コロナ関連支援のゼロ・ゼロ融資(実質無担保、無利子融資)や雇用調整助成金の特例制度のほか、飲食業には時短協力金なども支給されたが、苦境を抜け出せない飲食店も多かった。飲食業の倒産は、2020年は過去最多の842件を記録。緊急事態宣言の発令などで大人数や夜間の外食控えが定着し、飲食業者の売上が激減した。
東京商工リサーチがこのほど発表した「東京地裁の『飲食業』の訴訟数調査」結果によると、東京地方裁判所で飲食業者が提訴された訴訟事件数を集計したところ、コロナ前の2019年は82件だったが、コロナ禍の2020年は159件(前年比93.9%増)と約2倍に訴訟件数が急増し、2021年も118件とコロナ前を上回り、新型コロナの影響が長引いていることが分かった。
2020年は家賃滞納などによる「建物明渡・賃料」が89件と前年の2.6倍に急増。夜間を中心に繁華街から人出が途絶えた2020年2月以降、時短営業や休業した店舗を中心に、売上減少でテナント賃料を支払えない状況が浮かび上がる。テナント賃料のほか、取引先への売掛金や店舗で使用していた備品などを放置したまま休業する事業者もあり、リース料やレンタル料の滞納による訴訟も目立った。
業態別では、「食堂・レストラン」が最多、構成比は2019年59.7%、2020年61.6%、2021年56.7%と半数以上を占めた。「酒場・ビアホール」は、2019年は9件にとどまったが、2020年は29件、2021年も23件とコロナ前から約2倍に増えた。居酒屋を中心に、家賃未納によるテナント所有者からの「建物明渡」や、リース料未払い、店舗の状回復を行わず事業停止や退店したことで現状回復費用を求められる訴訟が相次ぎ、件数を押し上げた。
訴訟内容別では、いずれの年も最多は家賃滞納などでテナント所有者が立ち退きを求める「建物明渡・賃料」請求だった。2019年は33件(構成比40.2%)と全体の4割を占めたが、2020年は89件(同55.9%)と2.6倍に急増。コロナ禍の想定外の情勢変化で2020年以降、資金繰りがつかず事業の頓挫や、長期の休業から家賃滞納する事業者が相次いだことがうかがえる。
同調査結果は↓
東京商工リサーチ:コロナ禍で飲食業の訴訟が急増 最多は「家賃の未納」 東京地裁「飲食業」の訴訟数調査
(タックスコム提供)