元国税調査官・税理士の松嶋です。
税務の専門家としては残念なニュースですが、M&A仲介大手の元役員の方が、脱税で告発されたようです。
M&Aは税務問題が大きいですから、当然税務に対する高いコンプラ意識が必要なのに、情けないですね。
しかも、この方は税理士向けのセミナーなどもやられている方で、名前をご存じの方も多いと思います。
「国税当局の調査があるはずなので追加で納税すればよい、という軽い気持ちで行った~」というコメントがありましたので、長期にわたり無申告だった某芸人さんの事件や、取り敢えずの期限内申告という違法行為を思い出しました。
Yahoo!ニュース:M&A仲介大手の元役員、1.1億円脱税の疑い 東京国税局が告発(朝日新聞デジタル)
某芸人さんの事件で注目すべき点として、無申告であった年度は重加算税が賦課されていないというポイントがあります。
無申告は全部隠ぺいを意味しますので、重加算税の対象になる隠ぺいと、そうでない隠ぺいの違いが難しいことが原因です。
本件は一部申告していたということですから、不正取引にあたる隠ぺいと認定しやすいため、その分金額的には損をしたと言えるのかも知れません。もちろん、某芸人さんにしても本件にしても同罪で決して許してはいけないことだとは思いますが。
もう一つの取り敢えずの期限内申告とは、納税者から資料の送付を受けられないなどの理由によって期限内申告の数字が固まらない場合、加算税を削減するために適当な数字で申告をし、後日自主修正するという申告を言います。
加算税削減という意味で効果的、と喧伝される方がいますが、適正申告を期限内に行うという当然の義務を踏みにじる違法行為です。
本件は過少申告で取り敢えずの期限内申告をしていませんが、後日処理すれば問題ないと考える上で大差はありません。
再度「取り敢えずの期限内申告」などという違法行為に手を染めないよう注意したいところです。