個別労働紛争処理制度は、個々の労働者と事業主の紛争を、裁判に持ち込まず紛争当事者間で自主的かつ迅速な解決を図る制度。厚生労働省がこのほど発表した2021年度における同制度の施行状況によると、労働基準法上の違反を伴わない解雇、労働条件の引下げなどの民事上の個別労働紛争に係る相談件数は、前年度に比べて1.9%増の約28.4万件となり、2年ぶりに増加、過去最多を記録し高水準で推移している。
全国379ヵ所に設けられた総合労働相談コーナーに寄せられた労働相談は、2021年度1年間で前年度比▲3.7%の124万2579件と減少したが、14年連続で100万件を超え、高止まりしている。このうち、民事上の個別労働紛争に関するものは1.9%増の28万4139件だった。内容別では、「いじめ・嫌がらせ」が最多の8万6034件で10年連続トップ、「自己都合退職」4万501件、「解雇」3万3189件、「労働条件の引下げ」3万524件で続く。
個別労働紛争相談の内容を前年度と比べると、「いじめ・嫌がらせ」は8.6%増、 「自己都合退職」が2.5%増とともに増加したが、10年前までトップだった「解雇」は▲12.3%、「労働条件の引下げ」は▲5.5%と、ともに減少した。相談者は、労働者が83.0%と大半を占め、事業主からの相談は9.9%だった。労働者の就労形態は、「正社員」が36.4%、「短期時間労働者」13.8%、「有期雇用労働者」11.1%、「派遣労働者」4.6%となっている。
一方、自主的な紛争解決が難しい場合は、弁護士などの有識者で構成された紛争調整委員会にあっせんを申請できるが、2021年度のあっせん申請件数は前年度比▲11.6%の3760件だった。処理状況をみると、手続きを終了した3819件のうち、「合意が成立」したものが33.1%、申請者の都合による「申請取下げ」が4.5%、紛争当事者の一方が手続きに参加しないなどの理由による「あっせんの打切り」が61.8%だった。
2021年度内に処理した3819件のあっせんのうち、「2ヵ月以内」に処理されたものが80.8%とほぼ8割を占めている。なお、あっせんの申請者は、労働者が98.3%と大半を占め、事業主からの申請は1.7%、労使双方からの申請は0.1%(2件)だった。労働者のうち49.5%は「正社員」だが、「有期雇用労働者」(20.4%)や「短期時間労働者」(18.3%)も合計で4割近くを占める。
2021年度個別労働紛争解決制度の施行状況の詳細は↓
厚生労働省:「令和3年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表します
(タックスコム提供)