内閣府が「原材料価格の上昇と中小企業の収益」と題した今週の指標によると、企業収益は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた2020年4~6月期を底に改善していることが分かった。財務省の「法人企業統計季報」によると、2022年1~3月期の全規模全産業(金融・保険業を除く)の経常利益は前年同期比+13.7%の約22.8兆円と、5期連続の増益となり、1~3月期として過去最高を更新した。

しかし、規模別・業種別でみると、中小企業製造業が6期ぶりの減益となる前年同期比▲14.1%で、弱さが目立った。同じ時期の中小企業の売上高は、製造業で同+3.6%、非製造業で同+10.2%と、いずれも前年同期を上回っており、減益となったのはコスト増加によるものと示唆される。中小企業製造業の増収減益の要因を確認すると、企業の収益性を示す売上高経常利益率は、2022年1~3月期で5.3%と、前年同期差▲1.1%ポイントだった。

この売上高経常利益率を「売上高原価率」、「売上高販管費率」、「その他費用」で要因分解したところ、商品仕入原価や製造原価が計上される売上高原価率が下押し要因となっていることが分かった。さらに製造業を業種別にみると、売上高経常利益率が前年同期差で低下した主な業種は『非鉄金属』、『はん用機械』、『電気機械』、『輸送用機械』と、いずれも売上高原価率による下押しが目立つ。

中小企業における売上高原価率の上昇は、最近の原材料価格上昇に起因したものかを確認するため、日本銀行「全国企業短期経済観測調査」の仕入価格DIをみると、国際市況の上昇に伴い2021年以降大きく上昇していた。一方、販売価格DIは、仕入価格DIと比較し小幅上昇に止まっており、価格転嫁の進捗を示す疑似交易条件(仕入価格DIと販売価格DIの差)が悪化している。

大企業はコスト増加分の価格転嫁を進める一方で、中小企業は立場の弱さから取引先の大企業に対して価格転嫁が十分に実施できていないとみられる。緊迫するウクライナ情勢や部品供給制約等に伴う先行きの不透明感は増していることから、価格転嫁は喫緊の課題。政府は緊急対策に基づき価格転嫁の取組みを着実に実施するとしているが、引き続き原材料価格上昇および中小企業における価格転嫁の進捗には注視していく必要がある。

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内閣府:原材料価格の上昇と中小企業の収益

(タックスコム提供)