燃料価格の高騰に伴う電力市場の混乱により、新電力事業から撤退する動きが相次いでいる。帝国データバンクが発表した「新電力会社事業撤退動向調査」結果によると、2021年4月までに登録のあった「新電力会社」(登録小売電気事業者)のうち、6月8日時点で1割超にあたる104社が倒産や廃業、または電力事業の契約停止や撤退などを行ったことが分かった。3月末時点では31社だったものの、2ヵ月間で3倍超に急増した。
最多は、新規申込み停止を含めた「契約停止」で69社判明し、3月末から約5倍に急増。電力販売事業からの「撤退」は16社で、同5倍超の増加。「倒産・廃業」は19社で、うちISエナジー(大阪、4月破産)など4社で新たに倒産が判明した。売電事業の停止・撤退を行った新電力会社は多くが自前の発電所を持たず、市場から電力を調達することで発送配電コストを圧縮し、割安な料金設定を打ち出すことで顧客の囲い込みを行ってきた。
しかし、ウクライナ危機を受けた原油・液化天然ガス(LNG)の価格高騰も重なり、火力発電に頼る日本国内の電力需給が大幅にひっ迫。特に今冬シーズン(2021~22年)以降は市場価格高騰で電力調達コストが高止まりした状態が続いている。2020~21年冬の卸電力価格高騰で経営余力を削がれた新電力各社の経営を大きく圧迫し、採算維持が困難になった事業者で事業からの撤退や、倒産・廃業を余儀なくされるケースが相次いでいる。
日本卸電力取引所(JEPX)のデータをみると、2022年5月のシステムプライス平均は1キロワット時あたり17円だった。30円にせまった22年3月(26円)からは減少したものの、前年同月より2倍以上高い水準で推移している。一方で、電力・ガス取引監視等委員会のデータから帝国データバンクが推計した、2月の新電力における電力販売価格平均は、供給1メガワット時(MWh)当たり約2万900円だった。
前年同月の約1万6500円を上回り、21年9月以降6ヵ月連続で増加するなど、調達価格の上昇分を売電価格に反映させる動きが続いている。ただ、ほとんどの月では電力調達価格の上昇幅を大きく下回っており、コスト上昇分を吸収できていない。この結果、新電力の1MWh当たり販売利益(電力販売価格-電力調達価格)は、2022年2月は295円にとどまり、前年同月(9013円)から97%減と急減した。
暖房需要等で電力需要が増した1月は1784円の赤字に転じ、調達価格が販売価格を上回る「逆ザヤ」状態となった。実際の電力販売価格は供給する契約電圧によって異なるものの、家庭用より安値に設定されている事業者向け特高・高圧分野では、既に逆ザヤが常態化しているといわれ、厳しい状況が続いている。
同調査結果は↓
帝国データバンク:「新電力会社」事業撤退動向調査(6月)
(タックスコム提供)