日経新聞:相続節税、不動産活用に制約 最高裁が「借金」けん制

記事によれば「借入による大幅な評価減が可能な賃貸不動産などを節税を期待して購入する」という対策自体が著しく不適当ということです。(元仙台国税局長の川田剛税理士)

借り入れでなく現金購入だったら、著しい路線価との乖離のある時価の土地購入は否認されるのか?

また、このような土地について90代で購入、相続開始後1年未満売却、これは既に否認される根拠事例となっていそうです。

今回の判決が税理士など関係者を驚かせたのは、相続税の申告の中身が「通常の手法だった」(税理士の岡田俊明氏)からだ。土地の価格を路線価で評価することも、債務控除を使うことも手続きとしては当然といえる。仮に税務当局が例外規定を頻繁に使うことになれば「不動産を使った節税策が非常に使いにくくなってしまう」(税理士の藤曲武美氏)。

それでは今後、納税者側はどのように対処すべきなのだろうか。元仙台国税局長の川田剛税理士は、今回の最高裁判決は相続時の不動産評価の「著しく不適当」な場合について、「明確ではないが、一定の枠組みを示した」点に注目する。判決では時価が路線価を上回るだけでは著しく不適当ではないとした。そのうえで「借り入れにより大幅な評価減が可能な賃貸不動産などを節税を期待して購入する」という対策自体が著しく不適当だとした。

ここから読み取れるのが、まず、不動産を取得するための借り入れが問題視されたということだ。多額の借り入れがあれば債務控除を使い「取得した不動産以外の財産とも相殺でき、課税対象額を大きく減らせる場合がある」(辻・本郷税理士法人の浅野恵理税理士)。最高裁は不動産の評価減と並んで借り入れが課税対象額を大きく減らし、「実質的な租税負担の公平に反する」とした。

「不動産の取得が相続節税の目的に限られると判断されるのも避けた方が無難」(阿保秋声税理士)との見方もある。今回の裁判では被相続人は約10億円を90代で借り入れていた。融資した信託銀行は貸し出し稟議(りんぎ)書に「相続対策のため借り入れの依頼があった」と記載。さらに節税に使った賃貸マンションのうち1棟を相続開始後1年未満に売却していた。年齢や書面の記載、売却時期ともに「条件」はそろっていた。