人手不足感は、新型コロナの感染拡大前に近い水準まで上昇している。帝国データバンクが発表した「人手不足に対する企業の動向調査」結果(有効回答数1万1267社)によると、2022年4月時点における従業員の過不足状況は、正社員について「不足」と回答した企業は45.9%だった。前年同月から8.7ポイント上昇するなど5割に迫り、コロナ禍前に最も人手不足割合が高かった2019年(50.3%)に近い水準となった。

業種別においても、上位10業種それぞれで前年同月より上昇している。なかでも「情報サービス」が64.6%で最も高かった。経済産業省が2030年までに約40~80万人のIT人材が不足すると試算するなど危惧されていたなかで、依然としてIT人材の引き合いは強い結果となった。次いで、「メンテナンス・警備・検査」は60.1%と6割を上回り、「建設」も59.4%となり高水準が長く続いている。

そのほか、コロナ禍前まではインバウンド需要によって好調だった「飲食店」や「旅館・ホテル」は、2年前の2020年4月には1回目の緊急事態宣言によって大きな打撃を受けた。その時点での人手不足割合からは大きく減少したものの、直近では「飲食店」は56.9%で51業種中の6番目、「旅館・ホテル」は52.4%で9番目に高く、再び多くの企業が人手不足を感じている傾向が表れた。

一方、非正社員が「不足」とした企業は27.3%。正社員の傾向と同様に、前年同月から大幅に上昇。また、人手が「適正」は64.5%、「過剰」は8.2%だった。非正社員の人手不足割合を業種別にみると、「飲食店」が77.3%でトップ。全業種中で唯一の7割台となり、深刻な人手不足だ。次いで「旅館・ホテル」も56.1%と高い。また、正社員と同様に「人材派遣・紹介」(53.6%)や「メンテナンス・警備・検査」(43.9%)なども高かった。

生産年齢人口の減少などで、今後は採用がより難しくなることが予想され、人手不足の解消は事業継続や成長に向けて避けられない。政府も人手不足の解消に欠かせないデジタル化やDXを推進。また、地方からデジタルの実装を進める「デジタル田園都市国家構想」も本格化している。こうした時流に乗り、将来を見据ながら人手不足の解消に向けて積極的に取り組むことは、事業継続を左右する大きなファクターとなるとみられている。

同調査結果は↓
帝国データバンク:人手不足に対する企業の動向調査(2022年4月)

(タックスコム提供)