タビスランド:日税連の税制審議会 贈与の非課税枠拡大を提案 「少額贈与への対応は困難」

資産移転を促進させるのに暦年贈与廃止は阻害要因でしかない。持ち戻し期間長期化が妥当という結論ですが、妥協案としてまずはそこからなんでしょうね。

日本税理士会連合会の税制審議会(会長・金子宏東京大学名誉教授)は4月22日、資産移転の時期に中立的な相続税・贈与税のあり方についての審議内容を取りまとめ、神津信一会長に答申した。廃止が検討されている暦年課税制度を含めて網羅的に検討を行ったが、結論を得るには至らず、資産税改革の難しさを改めて浮き彫りにしたかたちだ。審議会の答申は日税連が毎年作成する税制改正建議書に反映されることとなる。

戦後から徐々に拡大されてきた暦年課税の基礎控除額が20年間にわたり110万円で据え置かれていることに着目し、「基礎控除の額は、資産の移転に障害とならない水準に引き上げることを検討する必要がある」と提案した。近年の資産税改革を巡る議論では、暦年課税制度の基礎控除枠こそが資産移転の時期に中立的でない最大の要因であると指摘されることが多いが、今回の答申では逆に基礎控除枠の拡大を求めたかたちだ。その上で、現行制度では3年となっている贈与財産の持ち戻し期間を長期化することで相続税と贈与税の一体化を図るべきと提案した。

これまでの税制改正の議論においては、毎年110万円以下の贈与を長年にわたって行うような相続税対策が〝資産移転の時期に非中立的〟だとして問題視されてきた経緯がある。そうした問題意識を踏まえて暦年課税制度の廃止も浮上したが、もし暦年課税制度が廃止されて年間110万円の非課税枠がなくなると、年間数万円~数十万円の細かい贈与を国税当局がどうやって捕捉し、課税徴収を行うのかという懸念も指摘されてきた。
こうした点につき今回の答申では、持ち戻し制度を長期化させたとしても少額の生前贈与を捕捉しきれない恐れを指摘している。報告書は、「基礎控除額以下の贈与について、税務当局はその情報を有していないこと、納税者においては申告義務がないことから、少額の贈与の全てを管理・記録・捕捉をして加算制度の対象とすることは実際問題とすると極めて困難」と指摘。さらに「少額な贈与に係る執行上の問題を解決しない限り、累積課税制度を導入しても適正な運用を行うことは困難であり、相続税と贈与税の一体化措置を構築することにも支障が生じる」と述べ、少額贈与の扱いが資産税改革における大きな障害との認識を示した。