昨日の財産評価基本通達6項(この通達の定めにより難い場合の評価)に係る最高裁判決は、口頭弁論が開かれたにもかかわらず、国税を勝訴とし、本規定を租税回避否認規定と位置付けた現状を変えない残念なものでした。

個人的には、国税勝訴としつつ、何らかの新しい解釈がでると見ていましたが、判決内容は課税の公平の観点から、多額の借金をして不動産を買って節税する、というのは富裕層だからこそできるスキームであり、一般納税者はできないため課税の公平からして問題、という税の平等原則から国税の処分を容認するものとなっています。

そもそも、ある規定が問題になれば、その規定が作られた趣旨を参照するのは当然ですが、どういう訳か本規定については判例で言われる「租税回避」のための規定、以外の理解が見られません。
この点、古い書籍ですが、本規定の「著しく不適当と認められる」については、以下の解説があります。

「財産評価基本通達の疑間点」
路線価等は、毎年1月1日を評価時点として評価し、これを1年間を通じて適用する~評価時点 (1月1日)以降、課税時期までの間に、地価が著しく下落するなどの理由により、路線価等に基づいた土地の評価額が、課税時期における土地の「時価」として適正でないということが、客観的に明らかになった~20%を超える地価下落があった場合には課税時期における時価が、路線価等を下回る結果となり、このような場合には、「著しく不適当と認められる」として、評価額を修正することが考えられます。そのほかの財産についても、種々の場合が考えられます。

上記を見れば一目瞭然ですが、
財産評価基本通達の評価額>その財産の時価
という過大評価の場合に、それを是正するための規定としてこの規定が置かれている訳です。
現状は圧倒的に、
財産評価基本通達の評価額<その財産の時価
の場合に使われている訳ですが、本制度の趣旨とは真逆に使われていることは明白です。

この点、相続税法22条の時価は、本来個別評価をしなければならないものです。
しかし、財産評価基本通達は割切りで時価を定めるという法と矛盾した暴挙に出ている訳ですから、最低限個別評価よりも低くなるようにしないと、それこそ課税の公平からして問題があるでしょう。
このため、
財産評価基本通達の評価額>その財産の時価
場合にのみ本来は適用されるべき規定であることについて、もっと声を上げる必要があります。

最高裁の判断を前提とすると、「課税の公平」というファクターで6項が使われるかどうかを判断せざるを得ない、ということになりますが、このような判断は基本不可能ですから、我々がやるべきは、柔軟な妥協も認められる税務調査でかわすことです。

ただし、柔軟な妥協というと、法律とは本来矛盾する訳ですから、余計に「課税の公平」の考えにそぐわない現実が生じるという残念な結果となります。