東京商工リサーチの調査によると、国内106銀行の2021年9月中間期決算の「総資金利ざや(中央値)」は、0.19%で、前年同期の0.14%より0.05ポイント上回ったことが分かった。9月中間期としては、2017年以来、4年ぶりに上昇した。だが、「資金運用利回り(中央値)」の低下には歯止めが掛からず、銀行の資金運用の厳しさが際立った。2021年9月中間期の「資金運用利回り(中央値)」は0.89%だった。

低金利の貸出競争の激化で資金運用利回りの低下に歯止めが掛かっていない。2020年同期以降、2年連続で1.00%を下回った。106行のうち前年同期と比較可能な103行では、「資金運用利回り」が前年同期を上回ったのは15行にとどまった。一方、「資金調達原価」が前年を下回ったのは、静岡銀行を除く102行。銀行は、資金調達コストの見直しや経費削減などで「資金調達原価」の低減に努め、「総資金利ざや」の確保に動いている。

国内106銀行のうち、前年同期と比較可能な103行では、2021年9月中間期の「総資金利ざや」が前年同期より上昇したのは76行(構成比73.7%)で、前年同期の58行から18行増加した。上昇した76行のうち、59行(同77.6%)は「資金運用利回り」が縮小した。ただ、「資金調達原価」も低下したことで、「総資金利ざや」の上昇につながった。「資金運用利回り」の中央値は0.89%で、前年同期より0.06ポイント低下した。

「総資金利ざや」がマイナスの「逆ざや」は4行にとどまった。前年同期の10行から6行減少し、2013年9月中間期(9行)以来、8年ぶりに10行を下回った。「逆ざや」は、マイナス金利導入後の2016年9月中間期、2017年9月中間期は19行に増加し、9月中間期としては2010年以降で最多を記録。その後も「資金運用利回り」は改善していないが、資金調達原価の縮小で2021年9月中間期の「総資金利ざや」は上昇した。

2016年2月、日本銀行がマイナス金利を導入以降、金融機関は低金利の貸出が続き、本業での収益確保が厳しさを増している。また、コロナ禍で企業の業績回復が遅れ、コロナ後を見越した与信費用の増加も収益に影響を及ぼしている。コロナ禍の資金繰り支援策の副作用で、多くの中小企業が過剰債務に陥り、貸出は伸びが鈍化している。金融機関は、コロナ収束後の企業再生やM&Aなど、貸出以外での収益確保も必要となっている。

同調査結果は↓
東京商工リサーチ:国内106銀行の総資金利ざや0.19%、4年ぶりに上昇(2021年9月中間期決算)

(タックスコム提供)