元国税調査官・税理士の松嶋です。
税務雑誌等から注目すべき税務記事を紹介します。
2022年02月21日 税のしるべからです。

最近の相続税の重加算税事案はこればかりなのですが、税理士への隠ぺいがあったかどうかが問われた事例が紹介されています。

国税は損害保険の共済金の申告もれについて、税理士が損害保険金について聞いた際、納税者は掛け捨てに移行した、と答えたのでこれは税理士に対する隠ぺいと決めつけた模様。

しかし、納税者は実際に掛け捨てに移行した損害保険もあったらしく、それなら移行したという誤解もあり得るので、隠ぺいではないと審判所は判断。何より、預金を全部税理士に預けていたので、隠ぺいしようがない状況であったことも幸運であったといえます。

以下、審判所の判断を引用します。損害保険について、再度聞いていないこともよかったようですね。一体、どうやってこの点立証したのか気になりますが。

令和3年6月25日裁決

国税不服審判所:(令和3年6月25日裁決)

原処分庁は、上記3の「原処分庁」欄のとおり、請求人は、本件各権利について財産的価値を認識していたと認められ、本件各権利を本件相続税の課税財産として申告する必要があると認識していたと認められるところ、本件申告に当たり、請求人は本件税理士から相続税額等の説明を複数回受けていることからすると、本件税理士が集計した財産に本件各権利が含まれていないことに気付かなかったとは認められず、請求人は、本件税理士に対し、本件各共済契約は掛け捨て型のものであると説明し、本件税理士に本件相続税の課税財産として申告すべき損害保険金はないとの誤解を生じさせた上、本件税理士に本件各権利の存在を一切告げなかったことは著しく不自然であることなどが、当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動に当たる旨主張する。

しかしながら、上記(3)のハのとおり、請求人が本件税理士に上記1の(3)のホの回答をした事実をもって、請求人が、当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたとは認められない。また、上記(1)のとおり、重加算税は、納税者に、隠蔽、仮装と評価すべき行為があることを賦課要件としていることに鑑みると、上記(2)のイのとおり、請求人による上記の回答以後、本件税理士が請求人に対して申告すべき損害保険契約に関する権利の有無について尋ねることはなかったと認められる本件において、請求人が本件税理士に本件各権利の存在を告げなかったことをもって、請求人の過少申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動に当たると評価することはできない。

したがって、原処分庁の主張には理由がない。

しかし、相続税において国税は本当に税理士に対する回答を重視します。
私たちとしては、申告に際し納税者の方にヒアリングするのは必須ですから、質疑応答は本当に注意しないといけません。