東京商工リサーチ:会社更生のイセ食品、とん挫した事業承継と「数百億円の美術品」
コロナの影響とかではなく、本業以外のオーナーの傲慢経営が原因だった
東京商工リサーチ(TSR)が関係者への取材や閲覧した資料によると、イセ食品グループは、関連会社へ資金融通や過大投資、高額な美術品への資金投下のほか、不適切な人員配置などでガバナンスが機能せず、生産性の低下が著しかった。また、グループオーナーが事実上支配するイセ食品グループ外の企業が買収した先を巡り、金融機関との関係も悪化していた。
高額な美術品への資金投下を続けた結果、イセ食品グループの法人が所有する美術品は、イセ食品グループの2021年度経営改善計画書によると、「パブロ・ピカソ」、「ポール・セザンヌ」、「マルク・シャガール」などの西洋絵画を中心に約80億円、中国陶磁器などの購入もあり総額約120億円に及ぶ。
一方で、イセ食品グループは2020年3月、約50行の金融機関へリスケ要請など私的整理を要請した。交渉した関係者によると、2021年3月末までにグループオーナーの後継者を決めて事業承継することや、オーナーへの貸付金の弁済などが私的整理の枠組みに盛り込まれ、2020年9月に全行が同意。これにより、2021年7月まで金融債務の返済が猶予された。
しかし、グループオーナーは、この枠組みの実行に非協力的で、事業承継は進まなかった。また、美術品も所有形態を巡り、金融機関との関係が悪化。猶予期限の2021年7月を過ぎても、約定を履行できない状態に陥った。