東京商工リサーチが、全国の企業経営者などへの信用調査を通じてIPO(新規株式公開)の予定や将来的な意向をヒアリングした「全国IPO意向企業動向調査」結果によると、全国で1857社がIPOの意向があることがわかった。2022年4月にスタートする東京証券取引所(東証)の市場再編まで1ヵ月を切り、増勢基調が続くIPOの動向にも注目が集まっている。
東証は長年続いてきた一部・二部制や新興市場を廃し、「プライム」、「スタンダード」、「グロース」の3市場に移行する戦後最大の変革期を迎えている。2021年の東証のIPOは136社(前年比33.3%増)で、2年連続で増加した。ただし、同年の上場廃止数は86社(同50.8%増)で、リーマン・ショック時の2008年(79社)を抜いた。コロナ禍などで見通しが不透明さを増すなか、東証市場は出入りの多い状況が続いている。
最新決算から3期連続で比較が可能な1422社の売上高を合算すると、最新期の売上高合計は8兆8062億円(前期比▲59億円減、▲0.06%減)と、微減だった。前々期から前期は3.6%増の伸びを示したが、増収から減収に転じた。当期利益の合計(対象1174社)は、最新期は1602億円の赤字だった。前期(▲267億円)に引き続き2期連続の赤字で、赤字が膨らんだ。長引くコロナ禍で成長が鈍化し、IPO意欲が減退する可能性もある。
対前年増減収を社数別でみても、増収企業の構成比は、最新期は61.7%で、前期から5.3ポイント減少。損益別では、最新期は赤字企業の構成比が41.5%と4割を上回った。前々期の赤字企業の構成比は34.6%、前期は38.3%に上昇し、最新期はさらに前期を3.2ポイント上回った。もともと初期投資の負担で赤字先行の企業が多いが、ここにきて赤字企業率は2期連続で上昇。利益確保が厳しく赤字に転落するIPO意向企業が目立っている。
IPO意向企業を産業別にみると、最多が「サービス業他」の576社(構成比31.0%)、次いで僅差で「情報通信業」の554社(同29.8%)が続き、以下、「製造業」の243社(同13.0%)、「卸売業」の153社(同8.2%)、「小売業」の121社(同6.5%)が続いた。最少は「農・林・漁・鉱業」の5社(同0.2%)で、「金融・保険業」(24社)、「運輸業」(29社)、「不動産業」(66社)、「建設業」(86社)の5産業が100社未満だった。
同調査結果は↓
東京商工リサーチ:全国「IPO意向企業」動向調査
(タックスコム提供)