会社法で定める「決算公告」だが、決算公告が義務付けられている「株式会社」では、約8割の企業が決算公告を官報と記載している。だが、東京商工リサーチがこのほど発表した分析調査結果によると、2021年に官報に決算公告した株式会社は4万154社で、全株式会社約254万社のわずか1.5%にとどまることが分かった。経営の透明性が重要視されているが、情報開示に消極的な中小企業が多いようだ。

「合併」や「資本金の額の減少」など、一部の法的公告は法令で官報公告と定めている。ただ、「決算公告」は「官報」だけでなく、「電子公告」や「日刊新聞紙」も可能だ。東京商工リサーチが保有する企業データベースによると、最も多いのは「官報」で、全体の83.1%と8割を超えた。日本経済新聞などの全国紙、地方紙などの「日刊新聞紙」ほかの公告は14.5%で、本社所在地の地元紙に掲載するケースも少なくない。

「電子公告」は商法等の改正で2017年から始まり、自社HPなどでの公告で利便性は高いが、まだ2.4%にとどまる。また、会社法では決算公告の義務を怠った場合、100万円以下の過料という罰則規定を定めている。だが、同法が適用されたケースはほとんど確認されない。決算公告が進まない理由は、貸借対照表の公告料が最低でも7万4331円(税込)、損益計算書を付記すると15万円近くかかるといった高額の公告料も一因とみられる。

2021年に「官報」に決算公告した未上場の株式会社4万154社を産業別にみると、最多は、「サービス業他」の27.4%で、3割に届かなかったが、積極的に官報公告を利用している。次いで、大手企業の子会社なども多い「製造業」の19.1%、「卸売業」11.5%、「情報通信業」10.4%と続く。社数の多い「建設業」は5.4%にとどまり、決算公告に消極的な姿勢がみられた。

資本金別では、「1千万円以上5千万円未満」が構成比39.5%と約4割を占め、次いで、「1億円以上」の大企業が29.7%、「5千万円以上1億円未満」が19.3%と続く。一方、「100万円未満」はわずか1.9%にとどまり、小規模事業者の情報開示への認識が低いことを示している。売上高別(判明分)では、売上規模が大きいほど公告比率が高く、最高は「10億円以上50億円未満」の31.6%。次いで「100億円以上」の18.3%と続く。

同調査結果は↓
東京商工リサーチ:[官報]決算公告の実施会社「わずか1.5%」)

(タックスコム提供)