元国税調査官・税理士の松嶋です。
税務雑誌等から注目すべき税務記事を紹介します。
T&A master910からです。

相続税の土地の個別評価が否認された東京地裁の事例が紹介されています。土地区画整理事業があるため、個別評価による減価が認められるべき、という主張が一蹴されています。

この理由として、本件においては、「本件個別路線価は、本件土地が本件土地区画整理事業の施行区域内の土地であることも考慮した上で定められたものと認められる」という指摘がなされています。ここにある、路線価~考慮、というのは非常に重要な考え方で、個別評価が認められるかはここで決まるといってもいいでしょう。

というのも、財産評価基本通達による評価において、すでにその減価要因が反映されているのであれば、あえて個別評価する実益はないからです。本件でも路線価に反映済、として一蹴されています。

本件と類似した事例でも同様の判断が示されていますので、さすがにこれは勝てない事案といえそうです。

東京地裁平成22年9月24日判決(Z260-11518)

評価通達には、このほかに、土地区画整理事業施行中の宅地であることによる減価又は増価に関する定めはないから、前記の場合における従前の宅地の価額は、土地区画整理事業施行中の宅地ではない宅地と同様の評価方法で評価されることになる。

4 そして、減価要因及び増価要因は、当該土地区画整理事業施行中の宅地の不動産市場における評価に自ずと織り込まれていくものと考えられるのであり、売買実例価額、地価公示価格、不動産鑑定士等による鑑定評価額、精通者意見価格等を基として評定される路線価の価額も、当然にこれを反映したものになるといえる。

5 そうすると、土地区画整理事業施行中の宅地であっても、路線価方式による評価を通じて、土地区画整理事業の施行地区内にあることに伴う減価要因及び増価要因がその価額に当然に織り込まれることとなるから、これに加えて更に減価又は増価の調整を施すことは、原則として不要であるというべきものであり、評価通達における土地区画整理事業施行中の宅地に係る評価方法には、何ら不合理なところはないというべきである。

鑑定評価可能、と声高に言う鑑定会社や専門税理士の方も多いですが、この点の検討がないと、そもそも俎上にものらないことになりますので要注意です。