元国税調査官・税理士の松嶋です。
税務雑誌等から注目すべき税務記事を紹介します。
2021年11月17日税のしるべ電子版より。

役員の一人会社なども増えていますが、その時に問題になるのが、会社が支払う場合がある損害賠償金の取扱い。会社が支払うので損金でいいはずですが、役員個人が支出すべきとされる場合があります。

法基通9-7-16(法人が支出した役員等の損害賠償金)
法人の役員又は使用人がした行為等によって他人に与えた損害につき法人がその損害賠償金を支出した場合には、次による。
(1) その損害賠償金の対象となった行為等が法人の業務の遂行に関連するものであり、かつ、故意又は重過失に基づかないものである場合には、その支出した損害賠償金の額は給与以外の損金の額に算入する。
(2) その損害賠償金の対象となった行為等が、法人の業務の遂行に関連するものであるが故意又は重過失に基づくものである場合又は法人の業務の遂行に関連しないものである場合には、その支出した損害賠償金に相当する金額は当該役員又は使用人に対する債権とする。

すなわち、
1 業務の遂行に関連したものか
2 故意または重過失に基づくものかどうか

といった側面が問われることになります。
ここで紹介されている審査請求事例だと、

・株式会社(有限会社を含む)の場合、その事業目的は定款に記載されていることから、その定款の事業目的に即して当該役員の活動の内容等を検討
・法人の業務命令に基づくものかどうかを検討する

といった点から、業務関連性を見るということが一つ。本件では、問題になった業務は定款上「各事業に附帯する一切の業務」の事業目的に含まれる可能性があるとしつつ、業務命令において疑義があるとして、業務関連性がないとして損金にならず、役員給与として取り扱われています。
このような処分が行われると、賠償金取られるのに節税効果は皆無で、むしろ役員給与の源泉が発生するというとんでもない課税になります。
そして、役員の「故意又は重過失に基づくものである場合」にも役員給与とされますので注意が必要ですね。民事の判断になりますので、税理士としては事実認定が難しいですが、和解に応じるにしても、少なくとも役員個人に、故意又は重過失はないことは相手先や裁判所に認めてもらう必要がありそうです。