帝国データバンクは昨年12月、「全国企業休廃業・解散動向調査」結果を発表した。それによると、日本における2021年の廃業件数はコロナ前から約1割減少するなど、大幅な減少が確実となった。11月時点でも引き続き、金融機関などの手厚い経営支援を背景に、廃業動向は年内も落ち着いて推移するものとみられる。ただ、廃業件数は過去5年で初めて企業倒産の9倍に達するなど、廃業動向は依然高水準で推移している点には変わりない。

2021年1~11月に全国で「休廃業・解散」が判明した企業(全国・全業種、個人事業主を含む)は5万448件(前年同期比▲3.0%)を数えた。2020年に続き11月時点で5万件を超えたものの、年間ではコロナ前の2019年(5万9225件)を最大で6000件程度下回る 5万3000~5000件前後にとどまり、2年連続での減少が確実となる。ただ、本業不振などに起因する赤字廃業の割合は前年から高まり、その内容には変化がみられる。

2021年前半は、前年に続き新型コロナウイルスの感染拡大、緊急事態宣言の発出などで国内外の経済活動が収縮。その後は人流の回復など景況感は回復の兆しがみられたが、飲食店や観光関連産業では厳しい経営環境が続き、小規模事業者を中心に「あきらめ型」の廃業が増える懸念があった。しかし、政府による中小企業への迅速な資金供給策、いわゆる「ゼロゼロ融資」をはじめ資金調達環境が良好であったことが功を奏した。

また、休業協力金をはじめ給付型マネーも潤沢に供給し、B to C業界を中心に、廃業へと傾きつつあった経営マインドに「待った」を掛けたことも、廃業件数が大幅に抑制された要因とみられる。一方で、業種や業態によっては廃業件数が増加するなど、業種間で二極化の傾向がみられる。2000年以降で過去最多を見込む業種は、来院患者の急減といった影響を受けた「クリニック」(402件)が11月時点で初めて 400 件を突破した。

このほか、「薬局・医薬品販売」(160件)、「歯科クリニック」(81件)など医療関係が上位となった。整備士不足が深刻化している自動車整備業関連のほか、旅行需要激減の影響を受けた「旅行代理店」(78件)などB to C系業種でも廃業の増加が目立つ。前年を上回る見込みの業種は、「内装工事」(387件)や「土工・コンクリート工事」(296件)など建設関係が上位となった。「ホテル・旅館」(168件)は過去 10 年で最多を更新する見込み。

同調査結果は↓
帝国データバンク:全国企業「休廃業・解散」動向調査(2021 年見通し・速報)

(タックスコム提供)