元国税調査官・税理士の松嶋です。
税務雑誌等から注目すべき税務記事を紹介します。
今回は2021年10月13日 税のしるべ電子版からです。
よく揉める、「機械装置」と「器具備品」の違いについての裁決事例が取り上げられています。判断根拠はいつも一緒なのですが、前者が「設備」で後者はそれ以外という基準。代表例として、以下の判例などが挙げられます。
東京地裁平成21年1月16日判決(Z259-11116)
前記(2)のとおり、「機械及び装置」並びに「器具及び備品」という用語は、法人税法、措置法及びその他の関連法規において、「機械」、「装置」、「器具」及び「備品」としてそれぞれが別個に規定されるのではなく、「機械及び装置」並びに「器具及び備品」という2組のまとまりとして規定されている。そうすると、措置法42条の6第1項1号の「機械及び装置」並びに「器具及び備品」の意義の検討に当たっては、「機械」、「装置」、「器具」及び
「備品」のそれぞれの個別の意味内容を探求するのではなく、「機械及び装置」を一体のものとし、「器具及び備品」を一体のものとして扱うのが相当である。
そして、法的安定性の観点からは、ある法令上の用語は、関連法規における同一の用語と整合的に用いられるべきであるから、ある減価償却資産が措置法42条の6第1項1号の「機械及び装置」又は「器具及び備品」のいずれに該当するかを判断するに当たっては、それが、耐用年数省令の別表第二において設備の種類ごとに369に区分され、その一部についてはさらに細目が設けられ、個別具体的に掲げられた「機械及び装置」と、別表第一において構造又は用途に応じて12に区分され、さらに細目が設けられ、個別具体的に掲げられた「器具及び備品」のいずれに該当するのかを検討するのが相当というべきである。
上記において、「耐用年数省令の別表第二において設備の種類」ごとに機械装置は区別されるというポイントを指摘しています。このため、機械装置=設備、という見方になると解されます。
話を戻しますが、税のしるべの記事を読むと、広辞苑を引っ張り出してきて、「機械」「装置」「器具」「備品」それぞれの意味内容を審判所は参照していますが、言いたいことは前者が複雑なもの、後者はシンプルなもの、ということで、結論を何とか「設備」に結びつけようとしている結論ありきの判断になっています。
しかし、「設備」というシンプルな基準で整理しようとしても、実務はそう単純ではありません。このため、常に困る訳ですが、審判所や裁判所の判断はこの「設備」という基準から変わることはないと考えられます。となると、インスピレーションで「設備」のものは原則「機械装置」として処理するのが望ましいと思われます。
なお、機械装置の判断で困るのが特別償却が絡む場合。この場合、押さえたいのは国税も機械装置の判断は得意ではないということ。となると、基本は証明書を交付する業者の判断を尊重しますので、機械装置になり得るものは、業者の確認も取っておく必要があります。