日本経団連がこのほど発表した「2021年3月卒の新規学卒者決定初任給調査」結果(有効回答数473社)によると、今年3月に卒業した新規学卒者の新入社員の初任給を前年より「引き上げた」企業は29.9%と、前年に比べ12.7ポイント減となり、3年連続で低下したものの、約3割にのぼっている。内訳としては、「求人賃金として前年の初任給を示したが、賃金改定後引上げた」が77.9%と大勢を占める傾向に変化はない。

一方、初任給を据え置いた企業の割合は、1994年(17.6%)~2003年(91.4%)にかけて多少の変動をしながら増加。04年(88.3%)~08年(52.0%)は景気回復等により減少傾向となったが、08年秋からの世界同時不況等の影響で09年(87.0%)に急増し、以降10年から13年まで4年連続で9割を超えていた。今年は、20年(57.4%)から12.2ポイント増加して69.6%と約7割まで上昇した。

初任給の決定に当たって最も考慮した判断要因は、「世間相場」(27.9%)が最も多く、これに「在籍者とのバランスや新卒者の職務価値」(22.9%)が続いている傾向に変わりはない。一方、「人材を確保する観点」(14.4%)と「賃金交渉の結果による配分」(9.8%)は2年連続で減少し、「企業業績を勘案」(8.9%)が 2019 年(4.3%)から倍増するなどの変化もみられる。

学歴別の初任給の引上げ額は、「大学卒・技術系」1117円(前年比68円減)が最も高く、次いで、「高校・技術系」1106円(同294円減)、「短大卒・技術系」1074円(同173円減)、「大学院卒・技術系」1057円(同295円減)の順となっており、全学歴で対前年引上げ率が若干減少した。引上げ率は 0.34%(大学院卒事務系)~0.64%(高校卒技術系)となり、全学歴、事務系・技術系・現業系とも、前年(0.55%~0.83%)より低下した。

初任給の推移をみると、2014年~2019年は業績の回復・拡大によって増加傾向にあったが、2020年から減少に転じている。2021年調査では、対前年引上げ率が、8年ぶりにすべての学歴で0.5%を下回る水準となった。また、「3000人以上」規模の初任給額を100としてみると、学歴別では、短大卒(事務系)においてすべての規模で100を上回っている。規模別では、総じて規模が小さくなるほど水準も下がっている。

同調査結果は↓
日本経団連:今春初任給を引き上げた企業は3割で3年連続低下

(タックスコム提供)