日本生産性本部が発表した「日本の時間当たり労働生産性の現状」によると、2019年度の日本の時間当たり名目労働生産性(就業1時間当たり付加価値額)は4927円となった。2011年度を境に上昇が続いていた時間当たり名目労働生産性は、2018年度に7年ぶりに低下したが、2019年度になって再び上昇へと転じている。労働生産性とは、労働者1人当たりで生み出す成果、あるいは労働者が1時間で生み出す成果を指標化したもの。

2019年度の物価上昇(+0.8%)を織り込んだ時間当たり実質労働生産性上昇率は前年度比+1.2%。労働時間短縮が寄与し、2018年度から1.6%ポイント改善した。コロナ禍の影響もあり、2020年4~6月期の実質労働生産性上昇率(季節調整済値ベース)は、前期比-2.7%と大幅なマイナス。ただし、実質労働生産性上昇率のマイナス幅は、企業の営業自粛などによる労働時間短縮が影響し、実質経済成長率のマイナス幅より小さい。

また、2019年度の日本の1人当たり名目労働生産性は821万円で、前年度とほぼ同水準だった。実質ベースの時間当たり労働生産性上昇率は前年度比-0.8%。2年連続で前年度比マイナスとなったが、2018年度から0.7%ポイント改善している。2019年度の1人当たり実質労働生産性上昇率がマイナスだったのは、実質経済成長率が±0%と停滞する中で、(労働生産性の低下要因となる)雇用の増加がまだ続いていたことによるもの。

2019年度以降の労働生産性の動向を産業別にみると、サービス産業・製造業ともに低下基調に転じている。2020年に入ってからは、さらに落込みが大きくなっており、特に製造業の落込みがより大きくなっている。サービス産業は、2019年央まで緩やかな上昇が続いていたが、その後低下基調に転じている。2019年後半の消費税率引上げに伴う消費の落込みに加え、緊急事態宣言で店舗営業が困難になったことが生産性にも影響した。

主な業種をみると、「小売業」は、外出を控える中で“巣ごもり消費”が増えたことなどが影響し、足もとの生産性の落込みがやや小幅になっている。一方、「飲食店」は、生産性の長期低落傾向が続くなか、外食を控える動きなどが打撃となり、足もとでさらに生産性が大幅に落ち込む状況に陥っている。「製造業」の労働生産性は、2019年後半に低下基調へと転じ、2020年4~6月期にはコロナ禍の生産活動停滞の影響で大幅に落ち込んでいる。

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日本生産性本部:日本の時間当たり労働生産性(就業1時間当たり付加価値額)の現状

(タックスコム提供)