東京商工リサーチが発表した「上場企業の雇用調整助成金調査」結果によると、新型コロナ感染拡大に伴う雇用支援で、2020年4月分から適用された雇用調整助成金の特例措置制度を受給した上場企業が、2021年9月末で829社に達した。上場企業(3855社)の21.5%を占め、前回調査(2021年7月末)の814社から15社増えた。雇調金計上額が判明した737社の合計は5829億9390万円にのぼり、7月末から12.3%増加した。

829社の計上額別は、最多は「1億円以上5億円未満」で283社(構成比34.1%)。次いで、「1億円未満」が277社(同33.4%)で、ともに3割を占めた。7月末との比較では、増加は「1億円以上5億円未満」(273社→283社)、「5億円以上10億円未満」(59社→62社)、「10億円以上50億円未満」(87社→93社)など。一方、社数の減少は、「1億円未満」(286社→277社)だった。中堅規模の追加計上などが相次ぎ、1億円以上が増加した。

829社の業種別は、「製造」が327社(計上額1115億2470万円)で最多。次いで、外食を含む「小売」159社(同1248億7620万円)、観光などの「サービス」154社(同1107億1540万円)と続く。業種別上場企業数を母数とした利用率で見ると、「小売」が45.8%(347社中159社)と群を抜き、次いで「運送」39.2%(125社中49社)、「サービス」28.8%(533社中154社)と、新型コロナが直撃した業種で申請企業が目立つ。

特例措置が開始された2020年4月以降に雇調金を計上し、かつ2021年度に入り、2期連続で計上した企業は289社あった。受給企業829社の3割超(34.8%)で、受給した3社に1社が連続計上している。連続計上の業種別では、「製造」の91社が最多。構成比では、「運送」(29社、59.1%)、「小売」(72社、45.2%)、「サービス」(60社、38.9%)の3業種が3割超の高水準だった。

雇調金の受給は、運送、小売、サービスが特に高水準で推移する一方、製造や卸売、情報通信は2020年度だけの計上にとどまり、業種間の深刻度の差は広がっている。現行の特例措置は12月末で終了する。行動制限の緩和で、受給規模が大きかった交通インフラや小売、観光などでは、従業員削減などのリストラ策と同時に、業績回復に期待をかけている。特例措置の見直しも視野に入るなか、BtoC関連の受給規模が縮小するか注目される。

同調査結果は↓
東京商工リサーチ:上場企業の雇調金 10社が計上額100億円超え 上場企業「雇用調整助成金」調査

(タックスコム提供)