経済産業省は、建築用木材の高騰が続き、市場に混乱を招いた「ウッドショック」について、日本でも輸入価格が上昇し、住宅建設への影響が懸念されることから、現在の木材価格はどうなっているのかを、コラム「統計は語る」で確認している。「ウッドショック」とは、今年3月頃から、住宅の柱や梁、土台などに使う木材の需給がひっ迫して木材の不足により価格が高騰し、大きな混乱が生じている状況のこと。
まず、輸入価格の動向について、日本銀行の企業物価指数(輸入価格指数)によると、木材・木製品・林産物全体の輸入価格は、本年9月には、前年末比で69%上昇。加工前の丸太は同23%の上昇。合板と集成材は、前年末比でそれぞれ49%、149%の大幅に上昇した。さらに、製材の輸入価格は前年末比2.37倍の水準となった。足下の価格も大きく高騰していることから、今後その影響が本格化することが懸念されている。
次に、価格高騰が著しい製材の輸入価格の動きに着目。米国からの輸入価格が、本年9月には、前年末比2.75倍に達しており、製材の輸入価格全体を大きく押し上げている。ロシア(北洋)からの輸入価格も、前年末比で96%高騰しており、世界的な規模での木材の上昇が生じている。欧州からの輸入価格も9月は前月比40%の急騰となり、概ね北洋輸入材と同程度の上昇幅となった。引き続き世界市場の動向から目が離せない状況にある。
一方、国内市場に目を向けると、最初に、丸太の輸入価格は前年末比23%の上昇だったが、国内価格(企業間の取引価格)は35%の上昇となった。特にひのき材の丸太に対する需要が高くなっており、9月には、前年末比76%の大幅な価格上昇となった。ウッドショックの長期化や木材価格の高止まりが継続することを見込み、来年度以降の加工材の安定的な供給量を確保するため、既に国産材の調達が本格化しているとみられる。
また、木材・木製品の国内価格(企業間の取引価格)は、9月時点で、前年末比で47%上昇。合板は、相対的に落ち着いた動きとなっていたものの、製材の国内価格は同62%と大幅に上昇した。製材の輸入価格が急騰を記録したが、製材を使用する企業が、自らの利益を一時的に圧縮したことに加えて、急騰していた輸入材から、相対的に安価な国産材へと調達をシフトし、輸入材価格急騰のショックの一部を一時的に吸収したものとみられる。
他方で、集成材については、輸入価格は、前年末比2.49倍の上昇、国内価格は2.27倍の上昇となった。集成材は、短期的な需要を満たすことが難しく、輸入価格上昇の影響を大きく受けた。また、8月から9月にかけて、集成材の輸入価格は、1ヵ月間で63%上昇。一方で、集成材の同期間における国内価格は11%の上昇にとどまったことから、今後の国内価格への影響が強く懸念される。
以上のように、輸入価格と国内価格の動向について、最新の状況を確認してきた結果、品目によって上昇幅などが異なる状態にある。本年9月分のデータまでで確認できる範囲では、全体として足下の丸太を除き、輸入価格も国内価格も引き続き上昇基調を継続している。したがって、日本国内では、当面はいわゆるウッドショックといわれる状況が継続する蓋然性が高く、今後の動向を引き続き注視していく必要があるとしている。
経済産業省 METI Journal ONLINE:いつまで続く?ウッドショック
(タックスコム提供)