元国税調査官・税理士の松嶋です。
税務雑誌等から注目すべき税務記事を紹介します。
今回は2021年09月13日 税のしるべからです。
税務調査時点で帳簿の作成をしておらず、無申告であった納税者に対する決定処分で、仕入税額控除が否認された事例があります。法人税や所得税とは異なり、消費税は保存義務が法定されているので、法解釈としては妥当な結論と言わざるを得ません。しかし、特に注意したいのは、本件は無申告で全く帳簿を作っていない納税者について、事前通知後に税理士が税務代理していることです。
実務を踏まえた場合、いかに無申告ともいえども、反省した上でできる範囲で協力すれば、仕入税額控除の全部否認といった強行的な対応を取ることは少ないです。記事を見る限り、期限後申告をしておらず、決定処分を受けているようで、税務署と戦っていることが読み取れます。
税務調査当初、「帳簿がないなら仕入税額控除否認」などと言われ、それなら戦うしかないといった判断だったかもしれません。しかし、このあたり、税務署の方も半ば脅しで使うことも多いです。このため、無申告を反省してうまく妥協したり、粘り強く交渉したりすれば、仕入税額控除の否認は強硬的であることもあって、国税も引いてくれたかも知れません。
簡単に言えば、「(調査官の仕事が早く終わるように)早急に期限後申告しますので、何卒仕入税額控除の否認だけは勘弁してください」的な交渉も相手の出方を見ながら行うと効果的です。
近年、税務調査のピンチヒッターとして活動される税理士も増えていますが、税務調査に関する法知識はもちろん、税務署の動きに対する感度がないと、対応間違えて大変な目にあうことがあります。もちろん、当初無申告などはそもそも論外ですが、税務署とトラブりそうな案件については、税務署の対応に熟知していないと、あらぬ方向に行ってしまうので慎重な交渉が必要になります。