小規模宅地等の特例とは、その正式名称を「小規模宅地等について相続税の課税価格の計算の特例」といい、租税特別措置法第69条の4において定められた制度です。
この制度は、被相続人または被相続人と生計を一にしている親族が居住または事業に使用していた宅地を、一定の者が相続または遺贈によって取得した場合に、相続税計算における評価額を減額することを認める制度です。
これによって、相続財産の評価額を大きく減少させることができ、相続人等の相続税の負担が軽減されることになります。
そこで、本記事では、具体的な宅地について、小規模宅地等の特例が適用されるのか否か、また、適用される場合に具体的にどのように適用されるのかについて、代表的な場合を見ていきたいと思います。
マンション
マンションについて、小規模宅地等の特例の適用を考える場合、次の4つの形態が考えられます。
- ①被相続人等がマンションの一室を区分所有していて、居住用に使用していた場合
- ②被相続人等がマンションの一室を区分所有していて、これを賃貸している場合
- ③被相続人等がマンション一棟を所有していて、これを賃貸している場合
- ④被相続人等がマンション一棟を所有していて、その一部に自ら居住し、それ以外の部分を賃貸している場合
マンションへの小規模宅地等の特例の適用
まず、区分所有マンションを所有している場合、建物についての所有権とともに、その敷地の利用権も有していることになります。
この敷地利用権は土地の共有持分の場合と、土地の借地権の場合とがあります。
そして、小規模宅地等の特例は、所有権のみならず宅地の利用権についても適用されます。
これは、租税特別措置法第69条の4が小規模宅地等の特例の適用について「土地又は土地の上に存する権利」について定めていることから明らかです。
そして、借地権も相続財産の評価においては土地の所有権評価額に借地権割合を乗じた額の価値を有するものとして評価され、それが相続財産に含まれるため、小規模宅地等の特例が適用される場合には、その借地権評価額から一定割合が減額評価されることになります。
被相続人が所有する居住用の区分所有建物への適用
①敷地利用権が所有権の場合
被相続人が所有していたマンションの敷地利用権が所有権の場合には、その敷地面積に対して共有持分割合を乗じた面積のうち330㎡までについて、その敷地自体の評価額に対して共有持分割合を乗じた金額の80%が減額評価されます。
一般的に、マンションの敷地面積に対して共有持分割合を乗じた面積が330㎡を超えることはないと思われますので、結局、その敷地全体の評価額に共有持分割合を乗じた金額の80%が減額評価されることになります。
②敷地利用権が借地権の場合
被相続人が所有していたマンションの敷地利用権が借地権の場合には、その敷地面積に対し借地権割合を乗じて借地権の評価額を算出し、これに対して共有持分割合を乗じて当該被相続人が有していた敷地利用権の評価額を算出します。
そのうえで、その借地権評価額に対して、共有持分割合面積が330㎡までの部分について80%が減額されることになります。
賃貸マンション
賃貸マンションの場合には、先に述べたマンションの場合に掲げた形態のうちの②から④の形態があります。
区分所有部分を賃貸している場合
上記②の形態です。
この場合には基本的なその宅地の評価額の算定まではマンションで述べた場合と同じです。
つまり、敷地利用権が所有権の場合は、その敷地全体の評価額に対して共有持分を乗じた金額がその評価額となります。
また、敷地利用権が借地権の場合には、その敷地の本来の評価額に対して借地権割合を乗じて、そのうえで共有持分割合を乗じることになります。
賃貸マンションの場合には、居住用宅地ではなく、不動産貸付事業用の宅地となりますので、これに対する小規模宅地等の特例についても、居住用宅地についてのものではなく、不動産貸付事業用宅地についての特例が適用されることになります。
その結果、この場合には最大200㎡までの部分について評価額の50%が減額評価されることになります。
一棟の建物全体が賃貸マンションとなっている場合
上記③の形態です。
被相続人が一棟の建物を所有していて、その全部を賃貸用としている場合には、その敷地の全体について、不動産貸付事業用宅地として小規模宅地等の特例の適用を受けることができます。
この敷地利用権が所有権の場合には、その敷地のうちの200㎡までの部分について評価額の50%が減額されます。
また、借地上に賃貸マンションを建築した場合のように敷地利用権が借地権の場合には、その土地全体の本来の評価額に対して借地権割合を乗じた金額について、200㎡までの部分について50%が減額されることになります。
一棟のマンション自体を所有しつつ、その一部に自ら居住し、それ以外の部分を賃貸している場合
上記④の形態です。
この場合は、居住用に使用している部分の床面積と、賃貸している部分の床面積とで、それぞれの使用割合を算出し、これに基づいて小規模宅地等の適用を適用することになります。
つまり、居住用に使用している部分の割合を敷地の評価額に乗じた部分については特定居住用宅地として330㎡まで80%の減額、賃貸用に使用している部分の割合を敷地評価額に乗じた部分については不動産貸付事業用宅地として200㎡まで50%の減額を受けることになります。
ただし、この場合には、特定事業用宅地の特例と、不動産貸付事業用宅地の特例とが併用されることになるため、その適用を受けることができる面積は、以下の算式が成立する範囲内に限られることになります。
特定事業用宅地特例の面積×200/330+不動産貸付事業用宅地特例の面積≦200
この範囲で、当該取得者が、特定事業用宅地の特例を受ける面積(80%の減額評価の適用を受ける面積)と、不動産貸付事業用宅地の特例を受ける面積(50%の減額評価を受ける面積)とを決定して、適用を申請することになります。
賃貸物件中に空き室がある場合の取り扱い
相続開始時に空き室となっている場合には、本来であれば不動産賃貸に使用している宅地とはいえなくなります。
ただし、前賃借人が退去し、次の賃借人が決まるまでの間、一時的に空き家となっているにすぎない場合には、なお不動産貸付事業用宅地として、小規模宅地等の特例の適用を受けることができるとされています。
この際の判断基準としては、
- ①空き室となった直後から不動産業者などを通じて新規入居者を募集していること
- ②新規入居者が決まり次第速やかに入居可能な状態に維持・管理していること
が必要とされています。
ただし、空き室となっている期間に、当該空き室を他の目的等に利用した場合には、最早、貸付事業用宅地とは認められなくなり、小規模宅地等の特例も適用できなくなりますので注意が必要です。
空き家
空き家となっているパターン
空き家としては、次の2つのパターンが考えられます。
- ①被相続人が複数の土地・家屋等を所有していて、居住用に使用していない家屋が相応の期間、使用されず空き家となっている場合
- ②被相続人が従来居住していたが、その亡くなる前に老人ホームに入居したり、または、病院に入院したことによって、相続開始の直前においては空き家となっていた場合
昔から空き家となっていた場合
この場合には、そもそも、当該宅地については、「被相続人または被相続人と同居する者の居住または事業の用に供されていた宅地」「被相続人と生計を一にする者の居住の用に供されていた宅地」のいずれにも該当しないことになります。
つまり、そもそも、当該宅地自体が小規模宅地等の特例を受けるための要件を満たさないことになります。
したがって、相続人がこの空き家の敷地となっている宅地を取得したとしても、小規模宅地等の特例の適用を受けることはできません。
被相続人が老人ホームに入居したり、入院していた場合
この場合については、以下の要件を満たす場合には、なお、被相続人が居住の用に供していた宅地として、小規模宅地等の特例の適用があるものとされています。
その要件は以下のとおりです。
①被相続人が、亡くなる直前において要介護認定、または、要支援認定を受けているか、または、障害者支援区分の認定を受けていたこと
②入居施設が次のいずれかであること
要介護・要支援認定をうけた者について
- ・老人福祉法第5条の2第6項の認知症対応型老人共同生活助成事業が行われる住居、同法第20条の4に規定する養護老人ホーム、同法第20条の5に規定する特別養護老人ホーム、同法第20条の6に規定する軽費老人ホーム、または、同法第29条第1項に規定する有料老人ホーム
- ・介護保険法第8条第28項の介護老人保健施設、同法第29条の介護医療院
- ・高齢者の居住の安定確保に関する法律第5条第1項に規定するサービス付高齢者向け住宅
障害支援区分の認定を受けた者について
- ・障害者の日常生活および社会生活を総合的に支援するための法律第5条第11項に規定する障害者支援施設、または、同条第17項の共同援助を行う住居
③不動産貸付事業やそれ以外の事業の用に使用せず、また、被相続人と生計を一にしていた親族以外の者の居住の用に供していないこと。
この要件を満たす場合には、被相続人が亡くなったときに、その居住していた自宅に被相続人が居住していない場合であっても、特定居住用宅地として小規模宅地等の特例が適用されます。
相続開始後に空き家となった場合
被相続人等の居住用宅地について、相続開始後に空き家となった場合については、その宅地を取得した者が誰であるかによって取り扱いが異なってきます。
①被相続人の配偶者が当該宅地を取得した場合
配偶者には継続使用等の要件は課されていないため、相続により当該宅地を取得後に、当該宅地上の建物を空き家としていた場合であっても、小規模宅地等の特例を受けられることについて何も問題ありません。
②被相続人と同居していた親族が当該宅地を取得した場合
被相続人と同居していた親族については、小規模宅地等の特例を受けるためには、相続税申告期限まで、当該宅地を所有して居るのみならず、継続して当該宅地を居住の用に供していることが必要とされています。
したがって、相続税申告期限までに当該宅地から退去し相続税申告期限において当該宅地上の建物が空き家となっている場合には、小規模宅地等の特例の適用を受けることができないことになります。
③3年借家住まいの別居親族が当該宅地を取得した場合
3年借家住まいの別居親族については、相続税申告期限まで、当該宅地を継続して保有していることは要件とされていますが、そこに居住していることまでは要件とされていません。
したがって、この場合には、当該宅地に居住しておらず、空き家となっていた場合でも、小規模宅地等の特例の適用を受けることができます。
④被相続人と生計を一にする親族が、その居住していた宅地を取得した場合
この者については、相続制申告期限まで当該宅地を所有しているだけでなく、引き続き居住していることが必要とされています。
したがって、相続税申告期限までに当該宅地から移転し、当該宅地が空き家となっている場合には、小規模宅地等の特例の適用を受けることができないことになります。
共有の家屋
①被相続人所有土地上に被相続人と子供が共有建物を所有し、被相続人と子供が同居していた場合
この場合において、建物の子供の持分部分については土地の使用貸借になると考えられます。
この場合、建物居住者は被相続人ですので、同居していた子供が宅地を相続により取得した場合には、その宅地の全部について小規模宅地等の特例が適用されることになります。
例えば、土地面積が500㎡、評価額が1億円の場合、
土地面積が500㎡と特定居住用宅地に係る小規模宅地等の特例の上限である330㎡を超えるため、その内の330㎡の部分に限定して、評価額の80%が減額されることになります。
その結果、減額される額は 1億円×330㎡/500㎡×80%=5,280万円となり、土地の評価額は1億円−5,280万円=4,720万円となります。
②土地・家屋がいずれもが被相続人と子供の共有で、被相続人と子供が居住していた場合
この場合で、被相続人が亡くなって同居の子供が土地を相続により取得した場合、子供が相続するのは被相続人の持分のみです。
したがって、この場合は土地の面積に対して被相続人の共有持分を乗じた面積のうち330㎡を上限として、当該土地の評価額に対して被相続人の共有持分を乗じた金額について、小規模宅地等の特例が適用できることになります。
例えば、土地面積が500㎡、評価額が1億円、持分がそれぞれ1/2の場合、
相続により子供が取得する面積は250㎡で、その評価額は5,000万円となります。
その結果、250㎡全部について小規模宅地等の特例が適用でき、5,000万円の80%である4,000万円の減額が認められ、相続分の評価額は1,000万円となります。
なお、建物が被相続人等の居住用ではない場合については、次に説明する「貸付事業用宅地」の問題となりますので、そこで説明いたします。
貸付事業用宅地
貸付事業用宅地とは、相続が開始される直前の時点で、被相続人または被相続人と生計を一にする親族が不動産貸付事業に利用していた宅地をいいます。
この場合については、不動産貸付事業用宅地として、小規模宅地等の特例の適用が認められています。
その要件、および、特例の内容は前で述べたとおりで、被相続人または被相続人と生計を一にする親族が相続開始直前において不動産賃貸事業を行っている場合において、
- ・被相続人が不動産貸付事業を営んでいた場合には、その貸付事業用宅地を取得した親族が、相続税申告期限まで継続してその事業を営み、かつ、その貸付事業用宅地を所有継続していることが必要とされます。
- ・被相続人と生計を一にする親族が不動産貸付事業を営んでいる場合は、相続開始後、その者が当該貸付事業用宅地を取得し、相続制申告期限まで事業を継続し、かつ、その貸付事業用宅地の所有を継続していることが必要とされます。
そして、不動産貸付事業用宅地にかかる小規模宅地等の特例では、最大200㎡までの範囲で、その評価額の50%が減額されます。
例えば、被相続人が所有する、評価額5,000万円、面積200㎡の土地上を賃貸している場合、相続によってその宅地を相続した子供が、引き続き賃貸事業を行う場合には、不動産貸付事業用宅地に係る小規模宅地等の特例により評価額の50%が減額されるため、その評価額は 5,000万円−(5,000万円×50%)=2,500万円 となります。
また、その土地の面積が500㎡であった場合は、小規模宅地等の特例を受けられるのはそのうちの200㎡の部分に限られます。
その結果、減額を受けられる金額は、 5,000万円×200㎡/500㎡×50%=1,000万円 となり、その評価額は 5,000万円−1,000万円=4,000万円 となります。
貸家建付地
貸家建付地とは、土地と建物を同一人物が所有している場合において、その建物のみを賃貸している場合の宅地をいいます。
この場合、本来、賃貸しているのは建物のみで、宅地については直接賃貸借契約の目的物とはされていません。
ただ、その場合でも、建物賃借人はその建物を利用する範囲で、その敷地である宅地も利用することができることになります。
そこで、被相続人が賃貸している建物の敷地を相続した親族は、この場合も、不動産賃貸事業に使用している宅地を取得した者として、不動産貸付事業用宅地にかかる小規模宅地等の特例を受けることができ、最大200㎡の範囲で、その評価額の50%の減額を受けることができるとされています。
駐車場
被相続人が所有する宅地が駐車場として利用されている場合については、被相続人自身の利用する駐車場であった場合と、駐車場として賃貸していた場合とで、取り扱いが異なってきます。
被相続人自身の使用する駐車場であった場合
小規模宅地等の特例は、当該宅地を被相続人の居住の用に供していた場合と、被相続人の事業の用に供していた場合です。
自らの所有する自動車の駐車場として利用する場合、これは事業の用に供する場合とはいえません。
また、駐車場に居住するわけではありませんので、居住の用に供する場合にも該当しないことになります。
以上から、被相続人自身の車を止めるための駐車場として利用していた宅地については、特定居住用宅地として、小規模宅地等の特例の適用を受けることはできません。
事業用の駐車場として使用する駐車場であった場合
被相続人等が営む事業用の車両を停車するための駐車場として利用していた場合については、「事業の用に供する」という要件は満たしそうです。
そのうえで、次に、その駐車場の形状が問題となります。
つまり、小規模宅地等の特例が適用されるためには、当該宅地上に建物または構築物が存在していることが必要とされるからです。
そのため、単に青空駐車場として平置きの駐車場があるだけの場合には、建物・構築物が存在しないため、特定事業用宅地としての小規模宅地等の特例を受けることはできないことになります。
一方、駐車場が建物・構築物となっている場合には、特定事業用宅地として小規模宅地等の特例の適用を受ける余地があると思われます。
駐車場として賃貸していた場合
この場合には不動産賃貸事業の用に供されていたものとなるため、その宅地の利用目的における要件はクリアしているといえます。
そうすると、次に、事業用駐車場の場合と同様に、建物・構築物の有無が問題となります。
つまり、平置きの青空駐車場の場合には、建物・構築物の存在という要件を満たさないため、小規模宅地等の特例の適用を受けることはできず、一方、建物・構築物が建築されている場合には、不動産貸付事業用宅地として、小規模宅地等の特例の適用を受けることができます。
なお、この場合は、その適用を受けることができる面積は最大で200㎡、減額割合は50%となります。
アスファルト舗装地
居住用の要件
アスファルト舗装地ですので、まず、被相続人の居住用建物への該当性は問題になり得ません。
したがって、特定居住用宅地としての小規模宅地等の特例の適用はあり得ません。
事業用または貸付事業の用の要件
居住用宅地に該当しない場合でも、それが事業の用に供する宅地の場合、または、不動産貸付事業の用に供される宅地の場合には、それぞれ特定事業用宅地または不動産貸付用宅地として、小規模宅地等の特例の適用を受ける余地があります。
構築物の要件
小規模宅地等の特例を受けるための要件としては、当該宅地上に建物または構築物が存在しているとことが挙げられていいます。
そこで、アスファルト舗装が、ここでいう建物または構築物といえるかが問題となります。
これについては、構築物に該当すると考えられています。
その結果、アスファルト舗装された宅地が事業の用に供されていると認められる場合、および、アスファルト舗装された宅地が駐車場等として賃貸されている場合には、当該宅地について特定事業用宅地、または、不動産貸付事業用宅地として、小規模宅地等の特例の適用を受ける余地があるということになります。
農業者
被相続人が農業を営む者であった場合に、小規模宅地等の特例を受ける余地があるかについて、検討してみます。
農地自体
農地自体については、小規模宅地等の特例は適用されないとしています。
これは、農地については相続税の納税猶予の制度が設けられているからとされています。
つまり、納税猶予制度によって相続税を納めること自体の猶予を受けることができるため、別途、小規模宅地等の特例を認める必要はないとして、その適用が否定されているのです。
農業用耕運機、トラクター、その他の農機具等の収納用建物
これらの建物については、それが農業という事業の用に供するための施設であることから、特定事業用宅地として小規模宅地等の特例による減額を受けることができるとされています。
要件
小規模宅地等の特例の適用を受けるためには、その宅地を取得した被相続人の親族、または、農業を営んでいた被相続人と生計を一にする親族が、引き続き農業を事業として営んでいて、かつ、相続続税申告期限までその宅地を所有継続していることが必要です。
小規模宅地等の特例の効果
農機具保管用倉庫等が特定事業用宅地として、小規模宅地等の特例の適用を受けることができる場合、その宅地について最大400㎡までの範囲で、評価額の80%が減額されることになります。
特定居住用宅地と特定事業用宅地の併用
農業事業者の場合、被相続人が居住していた宅地と、農機具などを保管するための倉庫の宅地とが相続される場合があります。
この場合、居住していた宅地については特定居住用宅地として小規模宅地との特例が適用され、さらに、倉庫等については特定事業用宅地として小規模宅地等の特例の適用がなされることが考えられます。
この場合については、特定居住用宅地については最大330㎡まで、特定事業用宅地については最大400㎡まで、合計で最大730㎡まで、その評価額の80%の減額を受けることが可能となります。
店舗併用住宅
店舗併用住宅とは、複数階建ての建物のうち、1階部分が店舗とされ、上階が居住用に使用されているような建物をいいます。
この場合には、その建物の床面積について、居住用に使用されている部分の面積と、事業用に使用されている店舗部分の面積を算出し、その面積の割合に応じて、その建物の敷地について特定居住用宅地として小規模宅地等の特例を受けられる部分と、特定事業用宅地として小規模宅地等の特例を受けることができる面積とを算出します。
そして、それについて、特定居住用宅地として相続された部分については、最大330㎡まで評価額の80%の減額を得ることができ、また、特定事業用宅地として相続された部分については最大400㎡まで評価額の80%の減額を得ることができます。
例えば、敷地面積が400㎡、評価額8,000万円の土地上に、2階建ての建物が建っていて、1階部分が店舗、2階部分が居住スペースになっているとしましょう。
各階の床面積は300㎡とすると、敷地面積400㎡について、居住用スペースに応じた敷地部分は200㎡、店舗スペースに応じた敷地部分は200㎡となります。
この場合いずれも特定居住用宅地の上限である330㎡、特定事業用宅地の上限である400㎡以下ですので、その全額について80%の減額を受けることができることになります。
つまり、1階店舗部分については、評価額8,000万円×店舗面積割合1/2×80%=3,200万円の減額を受けることができるため、その評価額は800万円となります。
2階の居住部分についても 評価額8,000万円×居住面積割合1/2×80%=3,200万円 の減額を受けることができるため、その評価額は800万円となります。
その結果、この宅地の評価額は800万円+800万円=1,600万円となります。
仮に、宅地の面積が500㎡で評価額が8,000万円、店舗に使用する部分の床面積が100㎡、居住用スペースの床面積が400㎡とします。
この場合、店舗部分と居住部分の比率は1:4となります。
したがって、敷地面積500㎡についても店舗部分に利用されている宅地面積は100㎡、居住用に利用されている宅地面積は400㎡とされます。
店舗部分については上限の400㎡以下ですので、全体について小規模宅地等の特例が適用されます。
その結果、8,000万円×1/5×80%=1,280万円 の減額を受けることができます。
その結果、評価額は8,000万円×1/5−1,280万円=320万円 となります。
一方、住居に利用されている割合は4/5ですので、それに対応する敷地面積は400㎡となります。
これは居住用宅地に対する特例の上限である330㎡を超えますので、400㎡のうち330㎡部分についてだけ、特例による80%の減額を受けることが可能となります。
その結果、8,000万円×4/5×330㎡/400㎡×80%=4,224万円 の減額を受けることができます。
その結果、居住スペース部分の評価額は、8,000万円×4/5−4,224万円=2,176万円 となります。
よって、この宅地の評価額は320万円+2,176万円=2,496万円 となります。
借地権にも小規模宅地等の特例は利用できる
土地は自分で所有できる所有権に対して、借地権というものもあります。
借地権は、土地を持っている人から土地を借りる権利で、賃貸の借家権に対する土地バージョンのようなものです。
借地権も相続財産の対象になり、条件を満たせば小規模宅地等の特例が利用できます。
土地面積330平米まで、最大80%減額できます。
もし借地権の評価金額が1,000万円あれば、最大80%減額により、200万円まで減額できます。
ただし借地権の評価額を正しく出すのは難しいため、間違えたくない人は専門家への相談がおすすめです。
相続で困ったら専門家への相談がおすすめ
相続で困ったことがあれば、専門家への相談がおすすめです。
ここからは、専門家へ相談するメリットを紹介します。
小規模宅地等の特例が使用できるか分かる
小規模宅地等の特例は、適用するための条件が複雑になっています。
適用条件を満たせば問題なく利用できますが、そもそも小規模宅地等の特例が利用できないケースもあります。
小規模宅地等の特例が利用できると思って相続税を計算しても、もし小規模宅地等の特例が利用できなければ、相続税の金額が大きく変わってきます。
小規模宅地等の特例は節税効果が高いため、適用できるかどうかを正しく判断しておかないと、損をするかもしれません。
そこで税理士といった専門家に相談すれば、小規模宅地等の特例が適用できるかどうか正しく判断してくれます。
相続が始まったらすぐに専門家へ相談して、特例が利用できるか判断することによって、スムーズな相続が実現できるでしょう。
相続税対策ができる
専門家であれば、相続税の対策ができます。
小規模宅地等の特例以外にも、相続時に利用できる特例はたくさんあります。
相続に精通している専門家であれば、相続財産・相続人の状況を見ながら、一番節税できる方法を教えてくれるでしょう。
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まとめ
以上、宅地がどのように利用されているかによって、小規模宅地等の特例がどのように適用されるのか、また、適用されないのか、そして、適用される場合の要件等について見てきました。
ただ、実際の相続事例では、もっと微妙な事例や、按分比例等についても複雑な事例等も出てくると思われます。
小規模宅地等の特例は、相続財産の評価額を減額するうえで非常に有効な制度ですが、その適用を間違えると十分な減額を受けられたはずなのにそれを利用できなかったり、間違って過度に減額をして申請してしまい、後で修正申告や加算税を納めなければならないといった自体にもなりかねません。
ですから、複雑になりそうだと判断される場合には、できるだけ余裕を持って、専門の税理士等に相談することをおすすめします。
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